日本の自立と食料安全保障について考える
「日本は今、自立しているか?」と、
この問いに対して、「自立していない」と感じる方も多いかもしれません。私は「日本はアメリカ幕府の天領」という比喩で、日本のアメリカへの依存度を語ってきましたが、それを否定することできないのではないでしょうか。
「5つの自立」というテーマについて。
5つの自立とは?
1. 精神の自立
2. 経済の自立
3. 食料の自立
4. エネルギーの自立
5. 軍事の自立
この5つの自立を達成することが、日本の本当の自立に繋がると考えています。
ロシアは「まあまあ自立している国」
例えば、ロシアはこの自立において部分的に成功していると言えます。
- 精神の自立:ロシア正教をベースとした独自の文化と価値観
- 経済の自立:やや未達成
- 食料の自立:小麦輸出世界一
- エネルギーの自立:原油生産世界3位、天然ガス生産世界2位
- 軍事の自立:核兵器超大国
これにより、ウクライナ侵攻後も地獄の制裁を受けながら、ロシアはしぶとくサバイバルしています。食料とエネルギーを自給できる強みは大きいですが、それでもプーチン政権の下でロシアは今後さらに苦境に立たされるでしょう。
日本の食料自給とその課題
今回注目したいのは「日本の食料の自立」です。食料安全保障の観点からも重要なテーマです。
食料自給率日本のカロリーベースでの食料自給率は38%、生産額ベースで63%です。特に米の自給率はほぼ100%に達しています。2008年や2022年の世界的食料危機がありましたが、日本では暴動や深刻な食料不足に陥ることはありませんでした。これは幸運なことです。しかし、次に食料危機が訪れた時、日本が同じように乗り切れるかは不透明です。
農業従事者の高齢化現在、日本の農業従事者の約70%が65歳以上です。この高齢化問題に対応しなければ、次の食料危機時には国民が飢える危険性があります。
次の食料危機に備えるためには?
次の食料危機に備えるため、日本は食料自給率を上げるための政策や農業の持続可能な発展に向けた改革を進める必要があります。
このテーマに関する詳しい情報は、末松広行先生の新刊『日本の食料安全保障』をお勧めします。末松先生は、農林水産事務次官としての豊富な経験から、世界と日本の食料事情について深い見識を持っており、この本で今後の日本の食料安全保障について学べます。
---
末松広行先生の『日本の食料安全保障』は、食料の安定供給が日本の未来にとってどれほど重要かを、世界的な視点からも掘り下げて説明しています。内容をもう少し詳しく解説します。
1. 世界の食料事情に忍び寄る危機
本書の冒頭では、世界全体で食料危機が高まっている現状が紹介されています。2022年のウクライナ侵攻や気候変動、新型コロナウイルスのパンデミックによる供給チェーンの混乱が、食料価格の急騰や食料不足を引き起こしました。
- ウクライナとロシアは世界の穀物供給に大きな役割を果たしており、特に小麦においては、ウクライナが世界5位の輸出国、ロシアが1位です。この供給が止まったことが、世界中の食料不足に拍車をかけました。
- また、気候変動による異常気象は、農業生産に大きな影響を与え、長期的にはさらに多くの地域で食料不足が進む可能性があります。
2. 日本の食に起きていること
次に、末松先生は日本国内の食料事情についても詳細に言及しています。
- 日本の食料自給率はカロリーベースで38%、生産額ベースで63%と低い水準です。特に穀物や飼料はほとんどが輸入に依存している現状です。
- 農業従事者の高齢化や後継者不足は、国内での生産能力の維持に深刻な課題をもたらしています。例えば、稲作においては高齢化が著しく、次世代の農業者を育てるための政策が急務とされています。
3. 食料安全保障の実現に向けて
本書では、食料安全保障を達成するために日本が具体的に何をすべきかが提言されています。
- 食料自給率の向上:食料自給率を引き上げるために、輸入に依存せずに国内での生産能力を強化する必要があります。これは単に数量を増やすだけでなく、農業技術の革新や効率化を図ることで、持続可能な生産体制を整えることを目指しています。
- 輸入先の多様化:日本は特定の国からの輸入依存度が高いため、リスクを分散するための輸入先の多様化も重要です。
- 食料リサイクルの推進:フードロスの削減や廃棄食品のリサイクルも、食料安全保障の観点からは重要な取り組みです。これにより、国内での食料資源を最大限に活用することが可能になります。
4. 稲作と水田という日本の強みを活かす
日本の強みとして、稲作と水田が挙げられます。稲作は日本の伝統的な食文化を支えるだけでなく、水田が環境保全や水の循環に果たす役割も大きいです。
- 稲作は日本の気候に適しており、自給率100%を維持できる重要な作物です。また、水田は洪水防止や水資源の管理にも貢献しています。この強みをさらに活かすため、稲作を中心とした農業政策の推進が提言されています。
5. 地球環境を守りつつ、地域経済を回す
本書では、食料安全保障の実現が単に食料の確保だけでなく、地球環境保全や地域経済の活性化にもつながることが強調されています。
- 地域農業の再生:地方の農業を支えることで、地域経済の活性化が図られ、人口減少や過疎化に対処することができます。これにより、地方の雇用創出や若者の定住促進も期待されています。
- 持続可能な農業:環境負荷を減らす農業手法の導入や、自然と共生する形での農業の発展が求められています。これにより、長期的に安定した食料供給が可能となり、気候変動や環境破壊に対処できます。
---
このように、末松先生の『日本の食料安全保障』は、日本と世界の食料事情を包括的に分析し、未来に向けた具体的な対策を提案しています。この本を通じて、食料自給や農業政策の重要性を理解することで、個々人が食の未来に対する意識を高めることそれが敷いては日本の自立への一助のきっかけとなればと思います。
--------------------------------------------------------------------------------------------------
読者の皆様が、幸せで健康でありますように!最後までお読みいただきありがとうございました。 ・・・心はいつもどまんなか。 by tadashian