訪日外国人観光客に対する二重価格制度：おもてなしの国・日本での是非
訪日外国人観光客の急増により、観光地では「観光公害」が深刻な問題となっています。例えば、北海道では観光客が農地に無断で侵入し、神奈川鎌倉では激しい交通渋滞とごみのポイ捨てが問題視されています。また、富士山では登山者の過度の混雑と山頂でのごみの散乱、京都では観光バスの混雑などが起こり、地域住民に大きな負担がかかっています。こうした背景から、訪日外国人観光客に日本人より高い料金を課す「二重価格制度」の導入が議論されています。
二重価格制度の目的と利点
二重価格制度は、主に観光地の維持・保護や地域住民への影響を軽減するために導入されることがあります。具体的には、インドのタージマハルやエジプトのギザのピラミッド、フランスのルーブル美術館、アメリカのメトロポリタン美術館、さらにはハワイのダイヤモンドヘッド州立記念公園など、世界各地で二重価格制度が導入されています。これにより、外国人観光客からの収益を観光地の保全やインフラ整備に充てることで、観光業を持続可能にしようという狙いがあります。
日本における導入のメリット
①観光公害の抑制：過度な混雑やごみの散乱を防ぎ、観光地を持続可能に保つためには、一定の料金設定が効果的です。外国人観光客に対して高めの料金を課すことで、観光地への過度な負担を軽減し、地域のインフラや環境を守る資金を確保できます。
②サービスの向上と地域経済の発展：二重価格によって得られた追加の収入は、観光地のサービス向上や地域のインフラ整備に活用されることが期待されます。例えば、ゴミ処理や交通渋滞の対策、観光バスの調整など、観光地が抱える問題に対応するための資金が得られます。
③観光地の混雑緩和：二重価格制度を導入することで、外国人観光客が過度に集中するのを防ぎ、観光地が適切に管理されるようになります。これは特に京都や富士山のような人気の観光地で効果を発揮するでしょう。
二重価格制度に対する懸念
不公平感と差別の懸念：外国人観光客に対して高い料金を設定することは、差別と受け取られるリスクがあります。おもてなし文化を大切にする日本では、こうした制度が外国人観光客に不公平感を与えることが懸念されています。観光客が「日本は外国人に対して冷たい」という印象を持つ可能性も否定できません。
観光客離れのリスク：料金の高騰は、特に長期滞在が少ない外国人観光客にとって負担となるため、観光客の数が減少する可能性があります。実際、他のアジア諸国に比べて日本は物価が高いとされていますが、さらに料金が上がることで観光客が他国を選ぶ可能性が高まるかもしれません。
会計トラブルと混乱：二重価格制度が適切に周知されなかった場合、外国人観光客が会計時にトラブルを経験するリスクがあります。特に、料金の違いが説明されない場合、不透明な価格設定が不満を生む可能性があります。
結論
観光公害や観光地の維持のために、二重価格制度を導入することは一定の効果が期待されますが、その導入には慎重なバランスが必要です。日本の観光業の発展と地域の保護のためには、外国人観光客からの追加料金をうまく活用する方法を見つけることが重要です。ただし、外国人観光客とのトラブルや不公平感を避けるためにも、透明で公正な制度設計が求められるでしょう。
